2016年度 理事長所信


第41代理事長 伊藤 峰由

一般社団法人可児青年会議所 第42代理事長

畑佐 卓

 

 

 

 

はじめに

昨年、私たち可児青年会議所は40周年という節目を迎えました。それは先輩諸兄が地域の方たちと共に「明るい豊かな社会」の実現を目指して歩んできた歴史でもあります。
温故知新というスローガンの元、この歴史を振り返り、その先人たちの想いに触れ、今の自分たちに何が出来るのかを見つめ直した年でありました。未来につながる41年目の一歩を踏み出すに当たり、改めてこの「明るい豊かな社会」とはどのような社会を示しているのかを考えてみました。
「明るい豊かな社会」とはひとつの理想社会であります。しかし、そのイメージは基本的にはその時代の価値観に基づくものであると考えられます。例えば戦後においては経済的な発展と物質的な豊かさがそのイメージであったといえるでしょうし、物質的に満たされた現代においては、生活の質や心の豊かさを求めているように感じます。物の豊かさから心の豊かさへと変わっていったように、この理想社会は普遍的なものではなく、人が誰しも持つ幸せになりたいという想いに社会的な要因を重ねることで出来上がるイメージであり、絶えず時代の流れによって変化し続けているものだと感じております。
だからこそ40年たった今も私たち可児青年会議所はその実現に向けて活動を続けているのであり、今その実現にむけて働きかけるからこそ、未来の新しい幸せのイメージが作られるのではないのでしょうか。
私たちはまだまだ歩みを止めることも緩めることもできません。この時代変化を感じ取りながら、常にその時の最善の一歩を踏み出し続ける必要があるのです。

人とひとがつながる地域へ
地域における人とひとのつながりの希薄化が進んでいると言われています。これまで経済力を高めることで物の豊かさや便利さを手に入れてきました。しかし効率性やスピードを優先してきた結果、助け合いや思いやりといった人とひととの絆が薄れたり、単身世帯や核家族世帯の増加、賃貸共同住宅への居住などにより地域での交際が少なくなっていること、地域の特色・独自性が失われるなどの地域における問題など様々な形で社会のひずみが表面化しています。
先に記したように幸せの指標が、物の豊かさから心の豊かさへと変わりつつあります。
ある幸福に関する意識のアンケートでは、経済情勢が厳しい今の時代においても、経済的に満たされるよりも、他人の喜びや人のためになることのほうが幸福感や満足感が高いという結果がでています。つまり心の豊かさを培うためには、人との触れ合い、触れ合う人がいる地域とのつながりが欠かせないという事であります。
それはかつてどの地域にも当たり前のようにあったものでありながら、これまでに失ってきたものであります。人はその価値に改めて気付き、そして求めはじめています。
人を取り巻く環境や社会構造の変化により、以前と同じようにはいかないかも知れませんが、それでも現代の形で人とのつながり、地域とのつながりを大切にしてお互いが積極的に支え合い、助け合う社会へと近づけてまいります。

子どもたちの生きる力を育む
昨今、過保護・過干渉な親が増えていると感じます。子どものことを心配して、失敗や挫折などをしないように先回りをしたり、子どもに代わって準備や段取り、意思決定をするといった行為を良かれと思って行なっているわけです。それは子どもの幸せを強く願う余りの行動でありますが、こうした環境下で育った子どもは自発性に欠け、依存的な子どもになりやすいといわれます。これは自発的な行動によって生じる成功体験がなく、挫折体験も少ないため、失敗や挫折に弱く、自らがやる気を持って一つの事に取り組むことが出来なくなっていくからであります。
子どもはいつまでも親の保護下で生きることはできません。いつかは必ず一人で歩まなければならない時が来ます。そして今後の社会を考えると、今まで以上に変化の激しい社会のなかで生きていく必要に迫られます。そのためには未来のどのような変化にも対応できるようなたくましい「生きる力」を身につけておく必要があります。
生きる力は、いかなる場面でも他人と協調しつつ自律的に社会生活を送っていくために必要な人間としての実践的な力であります。その力を養うためには学校教育だけでなく親子の触れ合い、友人たちとの遊び、地域の人たちとの様々な交流など、家庭や地域が生きる力の教育の場として機能していく必要があります。
子どもたちの本当の幸せを願うのであれば、子どもという安心して失敗できる時期に、失敗をし、そこから学ばせ、それを乗り越えて成功体験をさせてあげる事で、生きる力を身につけさせることが、子どもたちの未来の幸せにつながっていくと考えます。

他団体との協働をはかる
さまざまな団体が生まれ、この地域のために活動をしています。
よくJCしかない時代からJCもある時代へと変わったといわれますが、私はそのこと自体は大変喜ばしいことだと考えています。地域の人たちが自発的に地域のための活動を行う。理想社会の実現にはJCでなくてはならない必要はなく、こうした活動がひとつでも多く増えることが、その実現に大きく近づけていくことにつながります。
私たちは青年会議所単体にこだわるのではなく、同じ地域で活動している人たちと関わりを増やし、そこでの声に耳を傾け、目的を果たすためであれば力を合わせ、連携を深めていくべきであります。意見を交わす事で見識が深まり、協働を図ることでお互いの短所を補い、長所を取り入れながら、一つの団体では成し得なかった広がりを図ることが可能となります。
懐深く柔軟に多くのことを取り入れて、共にこの地域のために活動できる関係を増やしていきましょう。きっとその方が可児青年会議所は地域のなかで輝くはずです。

組織としての風土
風土という言葉があります。その地域を形容した言葉ではありますが、言葉の由来にその土地で生まれ育った人たち「土の民」と、外から来た人たち「風の民」が入り混じることで、その地域にあった文化を築き、それが地域の「風土」となるという考え方があります。
私が昔、可児青年会議所の例会にオブザーバーとして参加したときにこの言葉の成り立ちを学びました。その時、各務原で生まれ育ち可児市に移り住んで間もない頃で、余所者と思っていた自分でもこの地域に出来ることがあるのだと、ずいぶん勇気づけられたことを今でも覚えています。
可児青年会議所という組織としての風土を考えると、メンバーそれぞれで参加している目的も、青年会議所活動に対しての関わり方も違います。そうしたメンバーが入り混じりながら今の可児青年会議所はあると思います。個々の影響の大小はあれど、どんな立場、どんな考え方の人であってもすべからく、この可児青年会議所という組織の「風土」の形成に寄与しているということを意識してください。誰一人欠けても同じ風土にはならず、一人ひとりがこの組織にとって掛け替えのない存在であります。そのメンバーそれぞれが前を向いて、今よりもさらに一歩踏み出して活動に取り組む事ができれば、風土はさらにより良いものに変わり、組織としての大きな力になります。
そして風と混じることで、風土は幾度と無く変わります。変わるからこそ、その風土は絶えず魅力を持ち続けられます。可児青年会議所が魅力ある団体であり続ける為にも、一人でも多くの仲間を増やし、新しい風を入れ込むことで新たな風土を作っていきましょう。

むすびに
これより私たちは41年目という一歩を踏みだします。それは41歩目ではなく、時代と共に姿を変えつづけている「明るい豊かな社会」の実現に対して新たな一歩であります。
過去を大切にしながらも、新しい感性と価値観で未来を見据えて歩みだしていくものであります。この一歩は力強く、そして確かな歩みであったと過去として振り返ったときに言われるような一年にしていきましょう。
そして、可児青年会議所の活動にご協力いただいている、行政をはじめとする各種団体の皆さま、そして先輩諸兄には今後も変わらぬご指導とご支援をお願い申し上げます。
また、これからの可児青年会議所にこれまで以上に期待を寄せていただきたいと思います。その期待を力に代えて応えてまいりたいと存じます。

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